ルノーが日産の「崩壊」で110億ドルの損失
2025年、フランスの自動車メーカー・ルノーが突如として発表した「110億ドルの損失計上」。その背景には、長年パートナーシップを築いてきた日産自動車の構造的な経営不振があります。
この記事では、今回の損失の内実を解説しつつ、なぜルノーがこのような巨大な「帳簿上の損失」を認めたのか、そして日産という日本を代表する自動車メーカーがどうしてここまで追い込まれてしまったのかを、冷静かつ徹底的に分析します。
■ ルノーが認めた110億ドルの損失──それは何を意味するのか?
まず結論から言えば、この110億ドルという金額は、現金が実際に失われたというわけではありません。これは、あくまで「帳簿上の評価損」、つまり会計上の“見積もり直し”です。
ルノーはこれまで日産の株式を一定の簿価(帳簿価格)で評価してきましたが、今後は「日産の実際の株価」に基づいて評価する方針に変更しました。つまり、「日産という会社の価値がもはや以前のように見積もれない」とルノー自らが認めたことを意味します。
この措置によって、ルノーは110億ドル相当の資産を帳簿から減額──すなわち損失として計上したのです。
■ なぜルノーはこのタイミングで損失を認めたのか?
この決断の背景には、日産の継続的な業績悪化があります。
ルノーは現在も日産の株式を約37.5%保有する大株主です。つまり、日産が経営的に不振に陥れば、そのダメージはルノーの財務にも直撃する構造になっているのです。
2025年上半期、ついに「これ以上は見過ごせない」と判断されたのでしょう。ロイターの報道によれば、今後は「株式の市場価値ベースでの評価」に移行するとのこと。これは、アライアンスに対する信頼感そのものが損なわれていることをも示唆しています。
■ 「壊滅的」だった日産の米国市場──販売責任者が認めた現実
日産の崩壊を加速させた最大の要因は、アメリカ市場での「壊滅的」な販売不振です。
2025年4〜6月期、第2四半期の米国での売上は前年比6.5%減。日産ブランド単体では6.1%減、高級ブランド「インフィニティ」に至っては12.7%もの減少を記録しました。販売現場の責任者であるヴィナイ・シャハニ氏も、この状況を「壊滅的」と表現せざるを得ませんでした。
日産は米国市場において長らくトヨタやホンダと並び、安定した販売を維持してきました。しかし、近年はSUVやEVの開発競争に後れを取り、価格競争力やブランド価値が相対的に低下。販売店との関係も悪化しており、その影響が数字に表れた形です。
■ 業績回復に向けた“Re:Nissan”──再建の切り札となるか?
この深刻な状況を受けて、日産は新CEOイヴァン・エスピノサ氏のもと「Re:Nissan」と名付けられた新たな再建戦略を発表しました。
この戦略の柱は以下の通りです:
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2027年末までに1万1000人の人員削減
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世界17工場を10工場へと再編
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不採算市場からの撤退と重点地域への集中
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EVおよびハイブリッド車の開発強化
しかし、人員削減や工場統廃合は、確かにコスト削減にはつながりますが、それだけで業績を根本的に回復させられるかは疑問です。むしろブランドイメージの低下や、社内士気の低下など、新たなリスクもはらんでいます。
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