「あの車はもう勧めません」──とある母親の後悔
TikTokに投稿された一本の映像が、世界中のドライバーたちに衝撃を与えています。舞台はアメリカ・ウェストバージニア州。日常の一コマを切り取ったはずの動画が、今や120万回以上再生され、Kia(起亜自動車)の人気SUV「Telluride(テルライド)」への信頼を揺るがすものとなりました。
動画の投稿者は、ライフスタイル系インフルエンサーのHeatherさん(@aultheather)。彼女の愛車Kia Tellurideのダッシュボードから突如として煙が立ち上ったのです。エンジンを始動した瞬間、愛車のインフォテインメントシステムから煙が噴き出し、彼女とその子どもをパニックに陥れました。
「これまでKia Tellurideをおすすめしてきた人たち、全員に謝りたい」と語るHeatherさん。これは単なる個人のトラブルにとどまりません。Kiaが直近で出している多数のリコール情報、そしてタッチスクリーン車載機器に対する業界全体の不信感を象徴する事件と言えるでしょう。
インフォテインメントシステムが突然発煙
HeatherさんのTikTok映像では、彼女がTellurideに乗り込んだ後、車内のダッシュボードから煙が立ち上る様子が映されています。最初はパワーウィンドウを操作し、その後エンジンをかけたところで異常に気付きます。煙はインフォテインメント画面付近からもくもくと立ち上り、次第に車内を包み込む勢いに。
その間、Heatherさんの子どもが車のすぐそばにいたことも映像に映っており、多くの視聴者がヒヤリとさせられました。幸いにも、車は炎上には至らず、家族に怪我はありませんでした。
原因は「インフォテインメントユニットのショート」
後日、車はKiaのディーラーにレッカー移動され、点検を受けました。ディーラーの見解によれば、インフォテインメントユニットの内部ショートが煙の原因だったとのこと。Heatherさんの車に搭載されていたユニットはKia本社へ送り返され、詳細な解析が進められるとされています。
ディーラーはユニット全体を新品と交換する対応を取りましたが、なぜ発煙が起きたのかは最終的に明らかになっていません。Heatherさん自身は、「最近になってKiaの大量リコールの存在を知った」と述べており、現在は状況を理解した上で、修理に対して寛容な姿勢を示しています。
Kiaの直近のリコール──火災リスクはすでに問題視されていた
実は、今回のような“発煙・発火の可能性”はKiaにとって新しい問題ではありません。2024年には、2020〜2024年モデルのTellurideに対して、火災の危険性があるとして“屋外駐車を推奨”する大規模なリコールが発表されました。
このリコールでは、電動シートのスライドノブが引っかかることでモーターが過熱し、車両火災に繋がる可能性があるとされています。対象台数は46万台超──今回のHeatherさんの車両がこのリコールに該当していたかどうかは不明ですが、火災の危険を孕んでいたという点で共通しています。
テクノロジーの“魅力”が安全性の“盲点”に?
TikTok上では、「見た目だけ立派なタッチスクリーンは、安全性の劣化を隠すための目くらましだ」といったコメントも見られました。これは決して冗談ではありません。近年の自動車業界では、インフォテインメント機能が肥大化する一方で、物理的なスイッチやダイヤルが省略される傾向にあり、それが“操作性の低下”や“ドライバーの注意力散漫”に繋がると指摘されています。
さらに今回のように、電装系のトラブルが命に関わる問題に発展しかねないことが、改めて浮き彫りとなりました。
SNS時代のクレームは“バズる”ことで社会問題に
この件が大きく注目を集めたのは、Heatherさんの投稿が「共感」と「ユーモア」の両面で拡散されたからです。
コメント欄では、
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「あれはサウナ機能だよ」
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「最近の若い車はタバコを覚えたようだな」
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「怪しい音がしたらラジオの音量を上げるんだよ(笑)」
といった皮肉混じりの声が多く寄せられました。
Heatherさんの映像は、すでに23,800以上の「いいね」を集めています。まさに、SNSの力が自動車メーカーへの信頼や製品改善に直接影響を与える時代になったことを象徴しています。
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