はじめに:SUV時代の今、なぜセダンを選ぶのか?
近年、自動車市場ではSUVの人気が爆発的に拡大し、多くのメーカーがセダンをラインアップから外しつつあります。そんな時代に、トヨタの高級ブランド「レクサス」があえて刷新したのが、王道セダンの2026年型「ES」です。米国を中心に40,000台以上を安定的に売り続けるこのモデルは、単なる“残されたセダン”ではなく、「静かな本命」として進化を続けてきました。
最新モデルではデザイン、パワートレイン、プラットフォーム、インテリアすべてにおいて大胆なアップデートが施されており、従来の「静かで快適なだけの車」というイメージを大きく覆します。
本記事では、2025年4月に上海モーターショーで発表された2026年型レクサスESについて、徹底的に解説していきます。
歴史の重みと変化への決意:ESというモデルの存在意義
レクサスESは、1989年の初代LS400と同時に登場した歴史あるモデルです。北米市場では、LSと共に“日本発高級車”としての礎を築きました。全7世代にわたり、「快適」「信頼性」「控えめな美しさ」を体現してきたESは、まさにレクサスの「屋台骨」とも言える存在です。
そのESが、2026年モデルで大胆に生まれ変わりました。デザインの先鋭化と電動化対応を両立しつつ、「王道」であり続ける姿勢には、トヨタの戦略的な決意がにじみ出ています。
エクステリア:未来感と王道感の絶妙なバランス
コンセプトカーLF-ZCからのインスピレーション
今回の2026年モデルでは、2023年に発表されたレクサスのEVコンセプト「LF-ZC」の要素が色濃く反映されています。リアにはフルワイドのテールライト、鋭角なライティングエレメント、精密に彫刻されたボディサイドなど、先進性とスポーティさを意識したデザインが随所に施されています。
とはいえ、見た目の印象はあくまで「ESらしさ」を保っており、ブレードランナー的な近未来感に走りすぎず、伝統ある高級セダンとしての品格も維持しています。
ボディサイズの拡大
新型ESのボディサイズは大幅に拡大されました:
-
全長:202.3インチ(約5138mm)← 前モデル比 +約165mm
-
ホイールベース:116.1インチ(約2949mm)← 前モデル比 +79mm
-
全幅:2.1インチ(約53mm)拡大
-
全高:モデルによって数インチアップ
これにより、後席空間や乗降性、視界性が大幅に向上しています。
プラットフォームと構造:マルチパワートレイン対応の進化
2026年モデルES最大の特徴は、「デュアルプラットフォーム車両」として設計されている点です。これは、内燃機関(ICE)モデルと電気自動車(EV)モデルが同一のボディを共有するという意味で、トヨタ/レクサスにとっては初の本格導入です。
プラットフォームはTNGA-Kの進化形と見られ、バッテリー収納やEV化に必要な構造強化、後席空間の確保など、見えない部分にも革新が施されています。
また、サスペンションも従来のストラット式からマルチリンク式に変更され、乗り心地や静粛性の向上にも寄与しています。
パワートレイン:ハイブリッドとEV、選べる次世代ドライブ
ハイブリッドモデル:ES350h
従来のES300hに代わって登場するのが「ES350h」です。搭載されるのは2.5L直列4気筒エンジンをベースとしたハイブリッドシステムで、e-AWD(電動4WD)にも対応。
パワー値は未公開ながら、トヨタ・カムリの最新版と同等の225〜232馬力と推測されます。
電気自動車モデル:ES350e & ES500e
レクサス初となる電動ESは以下の2モデルが登場予定です:
-
ES350e(FWD):シングルモーター、300マイル(約483km)の航続距離
-
ES500e(AWD):デュアルモーター、より高出力(約380〜408hp)想定
使用バッテリーは77kWhと見られ、兄弟車のRZと共通の構成が採用されている可能性が高いです。
インテリア:ミニマルと贅沢の融合
内装デザインも大きく刷新され、旧来の木目や重厚感よりも、「モダンでミニマルな高級感」が前面に打ち出されています。
-
14インチのタッチスクリーン
-
12.3インチのフルデジタルメーター
-
Apple CarPlay / Android Auto / デュアルBluetooth対応
-
レザーやスエード風素材、アンビエントライト
さらに、ラグジュアリートリムの「Executiveパッケージ」では、マッサージ機能、足置き、リクライニングなど、フラッグシップ級の後席装備も用意されています。
アメリカ市場での存在感:ESが“王道”であり続ける理由
ESは単に「おとなしいセダン」ではありません。アメリカ市場においては、BMW 5シリーズやメルセデス・Eクラスといった欧州勢に対して、「快適性とコストパフォーマンス」の面で確固たるポジションを築いています。
そのうえで、2026年モデルでは「静寂性」と「高級感」に加え、「選択肢の豊富さ」と「見た目のインパクト」も加わり、より広い層に訴求することが可能になりました。
まとめ:セダンが消えゆく時代に、ESは何を示すのか
SUV全盛の時代において、あえて刷新された2026年型レクサスESは、「高級セダンの未来」を問い直す1台です。
-
EVとハイブリッドの併存
-
ミニマルで洗練された内装
-
ラグジュアリーの新解釈
このESは単なるモデルチェンジではなく、レクサスというブランドが「セダンという形式」を諦めていないという強いメッセージでもあります。
王道でありながら挑戦的。だからこそ、アメリカ人は今もESを選ぶのです。
コメント