三菱がアメリカへの出荷を停止――25%関税の衝撃と日本車メーカーの未来
2025年4月、三菱自動車はアメリカへの全車両出荷を一時停止したと発表しました。これはトランプ政権による自動車への25%関税政策の影響によるものであり、今後の三菱のみならず、日本の自動車業界全体にとって重大な分岐点となる可能性があります。
この記事では、なぜ三菱が出荷を停止したのか、その影響がディーラーや市場にどのように波及するのか、さらにはトランプ政権の通商政策が日米の自動車産業に与える長期的なインパクトについて、徹底的に分析していきます。
1. はじめに
三菱のアメリカ市場撤退の可能性が現実味を帯びてきました。2025年4月、同社は港に到着した新車の出荷を一時停止したことを明らかにしました。その背景にあるのが、再選されたトランプ政権による25%の関税政策です。
この一手が、世界中の自動車メーカーに大きな衝撃を与え、特に輸出依存型のビジネスモデルを維持してきた三菱にとっては死活問題となっています。
2. 三菱の現在の在庫と販売状況
米Automotive Newsによると、三菱は現在、アメリカ国内に20,245台の在庫を抱えており、これは約100日分の供給量に相当します。
ただし、これはあくまでも「今ある分」に限られ、以後の補充がなければ在庫切れによる価格上昇や選択肢の減少は必至です。
3. アウトランダーのインセンティブ削減と金利引き上げ
三菱の主力SUV「アウトランダー」では、すでに価格調整の兆候が現れています。インセンティブは1,500ドルから1,000ドルに削減され、ローン金利も2.99%から4.99%に上昇。
これは単なる金融政策の変化ではなく、「今後値上がりする前に買っておけ」という“無言のサイン”とも言える状況です。
4. 三菱の輸出依存構造とその脆弱性
三菱は、アメリカで販売される全車両を日本国内工場で生産しており、米国における現地生産は行っていません。トヨタやホンダがアメリカ国内に大規模な工場を持つのとは対照的で、この構造的な違いが大きなハンディとなっています。
5. トランプ政権の25%関税とは何か?
トランプ大統領は“米国第一”を掲げており、その一環として日本やEU、中国などからの完成車輸入に25%の関税を課す措置を取りました。
この政策の目的は、国内雇用を守ると同時に、外国メーカーに「アメリカ国内での生産」を促すことにあります。
6. 他メーカーも出荷停止へ:広がる連鎖
三菱だけでなく、他の海外メーカーも相次いでアメリカ向け出荷を停止しています:
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ロータス
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ジャガー・ランドローバー
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アウディ / フォルクスワーゲン
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ボルボ(S90を販売中止)
これは一時的な「様子見」ではなく、業界全体が本格的な対応フェーズに入っている証拠です。
7. 米国ディーラーの反応
三菱の正規ディーラーの中には「今ある在庫を売り切ったら、新車の仕入れは諦める」という声も多く、新車部門から中古車販売へ軸足を移す動きが進んでいます。
8. 中古車市場と価格動向の変化
新車供給の停止により、中古市場では「アウトランダーPHEV」や「エクリプスクロス」など人気モデルの中古価格が高騰する可能性があります。一方で、部品供給やメンテナンスの不安も広がっており、オーナーにとっては悩ましい局面です。
9. 日本国内への波及と再評価の動き
アメリカ市場での苦境とは裏腹に、三菱は日本市場で「デリカミニ」や「トライトン」などのヒットを生んでおり、国内再評価の機運も高まっています。
10. ビジネスモデル転換の必要性
輸出依存から脱却し、「現地生産+現地販売+現地消費」を基本としたビジネスモデルへの転換が不可欠です。三菱が再びアメリカ市場で生き残るには、抜本的な改革が求められています。
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