待っているぞ、新型RX-7
マツダファンなら誰しもが胸を熱くする「RX-7」の復活――その言葉だけで、心が踊る人は多いはずです。マツダのロータリーエンジンを愛し、あの軽やかな吹け上がりと唯一無二のドライビングフィールに魅了されてきたファンたちにとって、長い沈黙は決して諦めの証ではありませんでした。むしろ、「いつか必ず」という希望を胸に、あのロータリーの再来を信じ続けてきたのです。
そして2023年の「ジャパンモビリティショー」で、マツダが放った一筋の光。それが「アイコニック SP コンセプト」でした。ビオラレッドの美しいボディ、ロングノーズとワイドなリア、そしてロータリーエンジンを核にしたレンジエクステンダーハイブリッドという新世代の心臓。このコンセプトが示したのは、単なる懐古ではなく、未来を見据えたロータリースポーツの新しいカタチでした。
かつての栄光と苦闘の歴史を超えて
ロータリーエンジンの歴史を振り返れば、その誕生から常にチャレンジの連続でした。軽量コンパクト、高回転、スムーズな動作――これらの長所は多くのエンジニアとドライバーを虜にし、RX-7、そしてRX-8と、その名を冠したモデルは世界のスポーツカー史に確かな足跡を残しました。
しかし同時に、環境規制、燃費効率、耐久性といった課題に苦しんできたのも事実です。特に近年の厳しい排ガス規制の波は、内燃機関を擁護するにはあまりに強大でした。2012年のRX-8の生産終了をもって、一度はその系譜が途絶えたロータリー。しかし、マツダの中で火は消えていなかったのです。
アイコニック SP コンセプトが示す次世代ロータリー
「アイコニック SP コンセプト」が画期的なのは、ロータリーを単なるメインエンジンではなく、レンジエクステンダーとして位置付けた点にあります。つまり、航続距離と環境性能を両立させる役割としてロータリーを活かしつつ、電動モーターとのハイブリッドで総合出力を高め、約365馬力というスペックを実現しているのです。
この新しい役割は、かつてのロータリーとは似て非なる進化系です。マツダの梅下龍一最高技術責任者は、「ロータリーはマツダの魂の一部。その商業化は決して止まらない」と語っています。内燃機関の弱点を補い、なおかつ小型軽量という美点を失わずに新時代のスポーツカーに命を吹き込む――まさに現代の技術だからこそ可能になった挑戦です。
ロードスターの進化と共存
多くの人が気になるのが、「ロードスター(MX-5)」との関係です。「アイコニック SP」は明確にロードスターの後継ではなく、むしろ兄貴分と呼ぶべき存在です。ロードスターは「軽量・コンパクト・低価格」というコアを守り続け、新型の第5世代でも内燃機関を搭載し、マニュアルトランスミッションを継承します。
ロードスターが求めるのは、人馬一体の極致。「アクセルを踏み込めば応えてくれる」「カーブを曲がれば自然に重心が感じられる」――その感覚こそがファンに愛され続けてきた理由です。新型ではマツダ独自の「スカイアクティブZ」エンジンが搭載され、規制をクリアしつつも、あの官能的な回転フィールを守り抜きます。
ロードスターとアイコニック SP――同じ「走る歓び」を追求しつつも、異なるパワートレインとキャラクターでファンの裾野を広げる。これはマツダが掲げるスポーツカー戦略の核と言えるでしょう。
そして車名は…? RX-7か、RX-9か、それとも
気になるのが、その名前です。梅下氏は「断定はできない」としつつも、世界中のファンが求める「RX-7」の名を復活させたい思いを隠しません。もしかすると「RX-9」という新たな番号が与えられる可能性もあります。しかし一つだけ確かなのは、マツダにはかつてのRXシリーズを開発したエンジニアたちが今も在籍しており、その魂が確かに息づいているという事実です。
逆風の時代にロータリーを蘇らせる意義
しかし現実は厳しく、関税や環境規制、世界経済の不安定さがプロジェクトに影を落としています。量産化を進めるには、十分なビジネスケースを確立し、かつ各国の規制をクリアしなければなりません。それでもマツダは諦めていません。彼らは、あえて「意図的なフォロワー」であり続けることで、技術が成熟したタイミングで最高の製品を市場に投入する戦略を取っています。
2026年から2027年へ ― 市販化へのロードマップ
当初は2026年にも生産が開始できるとされていましたが、状況によってはさらに先送りされる可能性もあります。それでもファンは知っています。マツダが一度決めた挑戦を簡単に諦めないことを。そして、その完成度が必ずや期待を超えることを。
同時に、マツダは2027年に初の自社開発ピュアEVを導入予定です。パナソニックと協力し、円筒型バッテリーセルから将来の全固体電池まで対応可能な新プラットフォームを開発しています。ロータリーだけに留まらず、マツダは次の時代のパワートレインの多様性を見据えています。
伝統を守るだけでなく、文化を創る
さらに注目すべきは、マツダが行っているクラシックロードスターのレストア事業です。2017年から本社に設けられたレストアエリアで、初代ロードスターを当時の輝きに蘇らせ、所有者に再び感動を届けています。これは単なるサービスではなく、マツダが日本に「古いクルマを大切にする文化」を根付かせたいという熱い想いの現れです。
これにより、今後は3代目RX-7のレストアも検討されています。新車だけではなく、愛され続けた名車を後世に残す――それもまたマツダの使命です。
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