ランボルギーニ・レヴエルト ヴェルデ・アガベの強烈すぎる存在感
正直に言うと、私はこのカラーがどうしても「趣味が合わない」と感じてしまうタイプの人間だ。角度によって青にも紫にも黄色にも緑にも見える──まるで“タマムシ”。こう書くとネガティブに聞こえるかもしれないが、あくまでこれは私個人の感覚であり、セレブ層の審美眼とは天地の差があるのは重々承知している。
というのも、このランボルギーニ・レヴエルトの特別仕様「ヴェルデ・アガベ」は、もはやクルマというより“移動するアートピース”。ランボルギーニが誇るカスタムプログラム「Ad Personam」の中でも、ひときわ異彩を放つ選ばれしカラーだ。
セレブの間で“他と違う”を徹底追求するなら、こういう極端なチョイスになるのも納得だし、確かに見る者すべてを圧倒する迫力がある。庶民の感性では追いつかない領域に踏み込んだ、究極の一台と言って差し支えないだろう。
ただし──このタマムシカラー、万が一でも擦ったらどうなる? 修理代? いや、考えたくもない。
ということで今回は、そんな“良くも悪くもスゴすぎる”レヴエルトの異次元カスタム仕様について、私なりの視点から見ていこうと思う。
第1章:レヴエルトとは何者か?
2023年に登場したレヴエルトは、ランボルギーニの新世代を象徴するフラッグシップモデル。単なるガソリン車ではなく、6.5リッター自然吸気V12エンジンに3基の電動モーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載している。
- 出力:1001馬力(システム合算)
- 0-100km/h加速:2.5秒
- 最高速度:350km/h超
- トランスミッション:8速DCT
このスペックはもはやレーシングマシンの領域。普通の公道で全開加速することすらためらわれる。
第2章:ヴェルデ・アガベ──“タマムシ色”の衝撃
写真を見た瞬間、思わず「うわ、マジでタマムシ……」と声に出た。
このカラーは「ヴェルデ・アガベ」と呼ばれ、ランボルギーニのカスタムオーダープログラムでのみ選べる超限定色。見る角度、光の当たり方、背景の色に応じてボディが変幻自在に色を変える。紫、青、緑、黄緑、黒──そのすべてが滑らかに溶け合って、まるで昆虫の羽のような妖しさを放っている。
この「見る角度によって色が変わる塗装」は、**干渉色(インターフェレンスカラー)**と呼ばれる技術によるもの。1990年代に登場したフォード・マスタングの「ミスティクローム」なども同系統だが、ここまで階調が細かく、美しくまとめられたものは珍しい。
塗装そのものの施工にも極めて高度な技術が必要とされ、当然コストも跳ね上がる。普通の板金塗装屋では絶対に対応できない。事故ったら最後、工場行き確定だ。
第3章:Ad Personam──選ばれし者の遊び
「Ad Personam(アド・ペルソナム)」は、ランボルギーニが展開するオーダーメイドプログラム。エクステリアカラー、内装素材、ステッチ、ホイール、カーボンの光沢具合に至るまで、すべてを個別に指定できる。
このヴェルデ・アガベ仕様のような特注カラーはもちろん、インテリアのアクセントカラーや素材に至るまで完全にカスタマイズ可能。これにより、世界に一台しかないランボルギーニが完成する。
ちなみにこの一台、価格は約86万ユーロ。ざっくり言って日本円で約1億5700万円。カラーだけで中古の国産車が買えてしまうレベルだ。
第4章:写真から読み解く“ギラつきの構成”
このレヴエルトを真正面から見てみよう。フロントバンパー付近は黄緑と青が入り混じり、ボンネットからフェンダーにかけては紫の濃淡が広がっている。
- フロントフェイス:ネオンライム+青のハイライト
- ボンネット〜Aピラー:紫とマゼンタの光沢
- サイドパネル:深い青から黒へのグラデーション
- リアフェンダー:緑〜紫〜黒の迷彩的融合
写真だけでもこの情報量、実車なら目がクラクラするはずだ。これはもはや「光のファッションショー」だ。
第5章:インテリアはあえて控えめ(当社比)
意外なことに、内装はエクステリアほど“ギラついて”いない。
- シートベルト:ヴェルデ・ファウヌス(黄緑)
- アクセント:ライムグリーンのステッチとトリム
- センターコンソール〜ドア内張り:ブラックベース+差し色
もちろんカーボンパネルはふんだんに使われているが、全体的に「外装を引き立てる黒子」に徹している印象を受ける。
第6章:庶民にとっては“維持”も“修理”も別次元
この車、ぶつけたら終わり。というか、ぶつける勇気のある人間はそもそも乗っていないだろう。
例えばこの干渉塗装、板金塗装1パネル分で数百万円レベルとされることもある。一般的な保険では到底カバーしきれない。
さらにボディ全体を保護するため、専用のプロテクションフィルムを重ねるのが通例。これまた数十万〜百万円単位の追加費用。庶民にはまったく縁がない世界だ。
第7章:セレブの戦闘服──リゾート地に現れる“走るジュエリー”
想像してみてほしい。
イビサ、モナコ、ドバイ、あるいは芦屋。高級ホテルのエントランスに現れるこのタマムシ・レヴエルト。青でもなく、紫でもなく、しかし確実に「ただ者ではない」オーラを放って登場する。
その存在感はもはや“走るジュエリー”。どんなブランド品よりも目立ち、どんなパーティードレスよりも華やか。
これに乗っているということは、「見られること」が前提。つまり、レヴエルト・ヴェルデ・アガベはセレブたちにとっての戦闘服であり、登場の瞬間から視線を集めるためのツールなのだ。
私にはちょっと派手すぎる。でも、だからこそ“あちら側”の人々の象徴として成立しているとも言える。
終章:趣味は違えど、これは確かに“すごい”
このカラーリングを見て、「ちょっと悪趣味じゃない?」と感じるのは自然な感情だろう。私もそう思う。
だが、それと同時に、これが唯一無二であり、世界で最も目立つ自動車の一台であることもまた事実。性能、デザイン、色、存在感──そのすべてが振り切れている。
この“タマムシレヴエルト”は、万人に好かれる車ではない。 だが、誰にも忘れられない車ではある。
そしてそれこそが、ランボルギーニが創り出す“究極の自己表現”なのだ。
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