はじめに:消えかけた存在から注目株へ
日産が展開する2列シートのミッドサイズSUV「ムラーノ」は、近年存在感を失いつつありました。2016年に登場した前モデル以降、目立った改良はほとんどなく、「そろそろ打ち切りか?」と囁かれていたのも事実です。しかし、2025年モデルの登場でその空気は一変。まったく新しいデザイン、最新のパワートレイン、そして驚きのプレミアム装備を引っ提げて、ムラーノは見事に生まれ変わりました。
その完成度は、「もはやインフィニティでは?」と思わせるほど洗練されており、同セグメントの競合車と比べても引けを取らないレベルに達しています。本記事では、そんな2025年型ムラーノの魅力と課題を、細部まで徹底的に解説します。
エクステリア:一目で“上質”を感じさせる新デザイン
新型ムラーノの第一印象は、まさに「高級感」。電動SUVのアリアやコンパクトSUVのキックスからインスピレーションを受けたスタイリングは、フロントからリアまで一貫してモダンでスタイリッシュなデザインに仕上がっています。
特にフロントフェイスの立体感あるグリルと鋭いヘッドライトのデザインは、ラグジュアリーブランド「インフィニティ」と見間違えるほど。21インチの大径ホイールも装備され、全体的にどっしりとした存在感を放っています。
インテリア:プレミアムSUVと呼べる室内空間
質感の向上が著しいダッシュボードまわり
室内に足を踏み入れると、最初に目を引くのが水平基調で美しく整ったダッシュボードです。上級モデルではダークウッドパネルが大胆に使われ、空調パネルと一体化するタッチ式の操作部が高級感を演出します。
照明付きのスイッチは暗闇での視認性もよく、見た目の美しさと操作性の両立を実現しています。ただし、シートヒーターやベンチレーターの操作は小さなアイコンでタッチスクリーン内に配置されており、やや使いづらさが残ります。
不思議なカラーの内装パネルに賛否
評価が分かれるのが、エアベント上部からドアパネルへと伸びる青みがかったグレーのプラスチックトリム。光の当たり方によって色が変化するため、動的ではあるものの、落ち着きに欠けるという意見も。
統一感や高級感を重視するのであれば、単色の仕上げの方が好ましいと感じる人も多いでしょう。
快適性:同価格帯でマッサージ機能付きシート⁉
今回試乗した最上級「プラチナム」グレードには、前後ともに「ゼログラビティ」シートが装備されています。これは日産がNASAと共同開発したもので、体圧を分散させて長時間座っても疲れにくいという特徴を持っています。
さらに驚くべきは、フロントシートに搭載されたマッサージ機能。通常は高級車でしか見られないこの装備が、ムラーノでは標準装備という点が大きな魅力です。55,000ドル(約825万円)の価格帯でこの快適性を実現しているのは特筆すべきポイントでしょう。
テクノロジー:Google Built-Inで快適な車内体験
インフォテインメントの進化
新型ムラーノのテクノロジー面も見逃せません。12.3インチの大型ディスプレイは、Google Built-Inを採用しており、Googleマップやアシスタント、Playストアをスムーズに利用可能。Apple CarPlayやAndroid Autoもワイヤレス接続に対応しており、スマホとの連携もストレスフリーです。
さらに10スピーカーのBose製プレミアムオーディオシステムは、上質なサウンドで車内空間を満たしてくれます。64色から選べるアンビエントライトやヘッドアップディスプレイも用意され、プレミアムSUVらしい演出が光ります。
パフォーマンス:静かで快適、だけど加速に難あり
新開発の2.0Lターボ+9AT
旧型に搭載されていた3.5L V6に代わり、新型では可変圧縮比を持つ2.0L直列4気筒ターボエンジンを採用。インフィニティQX50などでも使われているこのエンジンは、最大241馬力・352Nmのトルクを発生します。
トランスミッションもCVTから9速ATに変更され、走行フィールは格段に改善。CVT特有の“ラバーバンド感”がなくなり、より自然でメリハリのある走りを実現しています。
低速加速にやや不満
しかし、発進時のもたつきがやや目立つ点は課題です。アクセルを踏んでもワンテンポ遅れてから加速が始まり、街中でのストップ&ゴーではストレスを感じる場面も。スピードが乗ってくるとスムーズに加速しますが、最初の一歩の遅さは明確な弱点と言えます。
乗り心地と静粛性:セグメントトップレベルの快適性
新型ムラーノは、乗り心地の面でも非常に高い完成度を誇ります。路面の凹凸や段差をしなやかに吸収するサスペンションは、プレミアムSUVと比較しても遜色ありません。
さらに、遮音性も秀逸で、風切り音やタイヤノイズを効果的に遮断。都市部の走行はもちろん、高速道路でも驚くほど静かで快適なドライブが楽しめます。
燃費性能:2.0Lにしては伸び悩む数値
燃費については、やや物足りない印象が残ります。エンジンがダウンサイジングされたにも関わらず、燃費は市街地21mpg、高速27mpg、総合23mpgと旧型とほぼ横ばい。重量が350ポンド(約160kg)増えた影響もあるのでしょうが、ここは次期改良でぜひ改善を期待したいポイントです。
また、残念ながら2025年モデルではハイブリッドの設定が用意されておらず、環境意識の高いユーザーには少しアピール力に欠けるかもしれません。
価格と価値:550万円台で高級装備を手に入れる
最上級グレードの「プラチナムAWD」の価格は55,030ドル(約825万円)ですが、マッサージ機能付きシート、Boseオーディオ、先進的なインフォテインメント、豪華な内装など、同価格帯のSUVと比べても装備内容は圧倒的。コストパフォーマンスは非常に高いと言えます。
まとめ:ムラーノは“ありきたりな日産”ではない!
2025年型日産ムラーノは、単なるモデルチェンジを超えた“再定義”とも言える内容で登場しました。高級感、快適性、技術力を兼ね備えながらも、日常使いにも対応する実用性を保ち、「ちょっと上質な生活を送りたい人」に最適な一台です。
アクセルレスポンスや燃費性能に改善の余地はあるものの、それを補って余りある魅力が詰まった新型ムラーノ。今後、ハイブリッドモデルやさらなる進化が期待されるこのモデルに、引き続き注目していきたいところです。
【スペック一覧】
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車両価格(Platinum AWD):$55,030
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パワートレイン:2.0L直列4気筒ターボ+9速AT
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最高出力:241hp @ 5,600rpm
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最大トルク:260lb-ft @ 4,400rpm
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燃費(市街地/高速/複合):21 / 27 / 23 mpg
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0-60mph加速:7.7秒
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全長×全幅×全高:4,900mm x 1,980mm x 1,725mm
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ホイールベース:2,825mm
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乗車定員:5人
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販売開始時期:発売中
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