フェラーリ12Cilindri Spider：官能的なV12が奏でる究極のドライビング

フェラーリ12Cilindri Spider：官能的なV12が奏でる究極のドライビング

フェラーリ12Cilindri Spiderは、ブランドの伝統を受け継ぎつつ、現代の技術とデザインを融合させた究極のオープントップGTカーです。その魅力は、クラシックなレイアウトと自然吸気のV12エンジンによる官能的なドライビング体験にあります。この記事では、12Cilindri Spiderのデザイン、パフォーマンス、技術、そしてドライビングエクスペリエンスについて詳しく探求し、その卓越した魅力を称賛します。

フェラーリの伝統と12Cilindri Spiderの誕生

エンツォ・フェラーリはかつて、「他のすべては派生に過ぎない」と自身のV12エンジンについて語りました。80年前、エンツォとジョアッキーノ・コロンボは最初のフェラーリV12エンジンを考案し、1947年に125 Spyder Corsaを世に送り出しました。2025年モデルの12Cilindri Spiderは、この伝統を受け継ぎ、フロントエンジンV12の魂を持つグランドツーリングカーとして登場しました。

このモデルは、フェラーリが2025年に発表する6つの新製品の先陣を切るものであり、その中には10月に初のEVも含まれています。また、F1ファンにとっては、ルイス・ハミルトンがスクーデリア・フェラーリのパドックに登場するオーストラリアグランプリが待ち遠しいイベントとなっています。ハミルトンは、エンツォと同様に、他者を魅了するクールな存在感を持ち、現代のフェラーリに独特の魅力を与えています。

デザインとスタイリング

12Cilindri Spiderのデザインは、1969年の365GTS/4、通称デイトナ・スパイダーにインスパイアされています。レオナルド・フィオラヴァンティが手掛けたこのモデルのクラシックなプロポーションは、長いクラムシェル型のボンネットと後方に配置されたキャビンに表れています。現代の12Cilindri Spiderでは、フロントエンドと調和した曲線と面が21インチの大径ホイールを美しく包み込み、Aピラーは劇的に後方へ傾斜し、フライングバットレスがヘッドレストからリアデッキリッドへと滑らかに繋がっています。

ポルトガルのカスカイスで行われた試乗会では、ヴェルデ・トスカーナという宝石のようなグリーンのボディカラーが太陽の下で輝き、12Cilindri Spiderのエレガンスを際立たせていました。フェラーリのデザイナー、アンドレア・ミリテッロは、エンジニアやテストドライバーと密接に協力し、最終的なデザインが言葉では表現できない「内臓に響く」感覚を伝えると述べています。

パフォーマンスとエンジン

12Cilindri Spiderは、フロントに搭載された6.5リッターの自然吸気V12エンジンを特徴とし、819馬力を発揮します。このエンジンは、フェラーリのエンジン伝説の最後を飾るものであり、オープンエアで体感するそのオペラのようなエンジンサウンドは、このモデルの存在意義そのものです。8速デュアルクラッチトランスミッションは、滑らかなシフトチェンジを提供し、リアホイールドライブの特性と相まって、ドライバーに刺激的な走行体験をもたらします。0-60mph（約96.5km/h）加速は推定2.8秒、最高速度は211mph（約340km/h）に達します。

エンジンの高回転域でのパフォーマンスを最大限に引き出すため、フェラーリは電子トルクシェーピング技術を採用し、3速および4速ギアでのパワーデリバリーを線形に保っています。この技術は、ターボチャージャー搭載モデルで以前から使用されており、加速性能を損なうことなく、エンジンのレスポンスを最適化しています。

ドライビングエクスペリエンス

12Cilindri Spiderは、オープントップでのドライビングが真骨頂です。ポルトガルの海岸沿いの道を走行した際、エンジンを始動すると、その音色はまさに「ベリッシモ！」と表現するに相応しいものでした。フェラーリのチーフデベロップメントドライバーであるラファエレ・デ・シモーネは、エンジン音と調和するオーディオ体験を提供するため、Burmester製1600ワットのオーディオシステムの「Live」設定を推奨しています。この設定は、トップを下げた状態でも、エンジン音とオーディオのバランスを保ちながら、コンサートのような音響体験を提供します。

試乗中、ADAS（先進運転支援システム）をオフにして、純粋なドライビングを楽しみました。ハプティックタッチのボタンを軽く押すだけで、制御支援が解除され、車と一体となる感覚が蘇ります。

ステアリングホイールに配置されたタッチセンサーは、最初は少し慣れが必要ですが、指先に馴染むと直感的に操作でき、ドライバーとマシンの距離を一層近づけます。ドライバーが望む限りのフィードバックを返してくれるステアリングは、まさに人馬一体の感覚を味わわせてくれました。

カスカイスの海岸沿いを駆け抜けながら、自然吸気V12エンジンが奏でるシンフォニーを堪能します。直線ではアクセルを踏み込み、V12エンジンの咆哮を全身で浴びながら、カーブでは精密なハンドリングとシャーシの安定感を感じ取ります。

特に印象的だったのは、サスペンションのマグネトレオロジー式ダンパーが生み出す滑らかな乗り心地です。荒れた路面でもボディが跳ねることなく、路面に吸い付くように走るその感覚は、GTカーとしての快適さとスポーツカーとしてのダイナミズムを両立させています。

試乗を終える頃には、12Cilindri Spiderが単なるスーパーカーではなく、ドライバーの五感を刺激する「走る芸術品」であることを確信しました。ハプティックタッチの操作がもたらす直感的なコントロール、そしてV12エンジンの魂を揺さぶるサウンド。そのすべてが、フェラーリというブランドの真髄を体現しています。