電気自動車先進国ノルウェーの状況とは？
電気自動車（EV）の普及率が高い国として、よくノルウェーが挙げられます。実際、2022年には新車販売の約75%がEVやプラグインハイブリッド車（PHEV）で占められ、世界一のシェアを誇りました1。2023年にはさらに80%を超えると予測されています。では、なぜノルウェーはEVに積極的なのでしょうか？
ノルウェーがEVに積極的な理由
ノルウェーがEVに積極的な理由は、主に以下の3つです。
環境保護への意識の高さ
石油収入による財政的余裕
政府による優遇策の導入
まず、ノルウェーは環境保護への意識が高い国です。気候変動や大気汚染などの問題に対して、低炭素社会への移行を目指しています。その一環として、自動車の排出ガス削減に取り組んでおり、EVはその有力な手段となっています。
次に、ノルウェーは石油産出国として知られており、その収入によって財政的な余裕があります。そのため、EVの普及促進に多額の予算を投じることができます。また、石油依存度を下げるためにも、再生可能エネルギーへの転換を進めており、EVはその一助となっています。
ノルウェーでは政府がEVを優遇するさまざまな策を導入しています。例えば、以下のようなものがあります3。
EV購入時や所有時の税金や登録料を免除する
EV利用者に対して駐車料金や高速道路料金を無料または割引する
EV利用者に対してバスレーンやカープールレーンを利用できるようにする
EV利用者に対して充電インフラを整備し利用しやすくする
これらの優遇策は、EVを購入する消費者やメーカーにとって大きなインセンティブとなっており、EV市場の拡大に寄与しています。
ノルウェーのEV現状
※2021年の各国自動車販売台数に占めるEVおよびPHEVの割合
ノルウェーでは2022年までに約50万台のEVが登録されました4。これは人口約540万人の国としては非常に高い水準です。また、充電インフラも充実しており、2022年末時点で約1万3000基の公共充電器が設置されています。これは100kmあたり平均約25基という密度であり、欧州でもトップクラスです。
ノルウェーでは様々なブランドやモデルのEVが販売されており、消費者のニーズに応えています。2022年のEV販売台数の上位5位は以下の通りです。
テスラ・モデル3（約1万5000台）
フォルクスワーゲン・ID.3（約1万2000台）
ナイサン・リーフ（約8000台）
アウディ・e-tron（約7000台）
ヒュンダイ・コナEV（約6000台）
ノルウェーのEV今後の展望
ノルウェーでは、2030年までにすべての新車がゼロエミッション車（EVや燃料電池車）になることを目標としています。そのため、政府は引き続きEVを優遇する政策を維持するとともに、充電インフラの拡充や普及啓発などを行っていく予定です。また、自動車メーカーもノルウェー市場に合わせて新しいEVを投入していくでしょう。
ノルウェーはEV先進国として、世界にお手本を示しています。しかし、それだけに課題も多くあります。例えば、以下のようなものが挙げられます。
EVの普及に伴う税収減少や公共交通機関の利用減少への対策
EVのバッテリーのリサイクルや廃棄物処理への対策
EVの充電需要に対応する電力供給や安定化への対策
EV以外の低炭素交通手段（自転車や歩行など）の促進への対策
電気自動車は、環境にやさしいというイメージがありますが、実際にはバッテリーの製造や廃棄に伴う環境負荷が高いという指摘があります。特に、バッテリーに使われるレアメタルの採掘や精製は、水質汚染や土壌汚染などの問題を引き起こしています1。また、バッテリーのリサイクルや廃棄物処理の技術や体制もまだ十分ではなく、有害物質の漏洩や火災などのリスクがあります2。
電気自動車は、政府の優遇策によって購入や使用が容易になっていますが、その反面、内燃機関車の所有者や公共交通機関の利用者にとっては不公平感が生じています。例えば、電気自動車は高速道路料金や駐車料金が無料または割引されていますが、内燃機関車は高額な税金や料金を支払わなければなりません。また、電気自動車はバスレーンやカープールレーンを利用できるため、渋滞を回避できますが、公共交通機関は混雑や遅延に悩まされています。
電気自動車は、石油を売った代金によって国内の普及が進められていますが、その石油は海外で使われるため、地球全体のCO2排出量削減には何も貢献していません。むしろ過度な電気自動車需要の高まりによってCO2の排出量が増えていることにもなります。ノルウェーでは、再生可能エネルギーへの転換を進めており、電気自動車はその一助となっていますが、それだけでは十分ではないという意見もあります。
ノルウエー市民の電気自動車満足度
ノルウェーの市民は電気自動車に満足しているという調査結果があります。ITmediaの記事によると、2021年10月にノルウェーで行われたアンケートでは、電気自動車に乗り替えた人の約65％が「満足」と回答し、わずか7％が「不満」とのことです。
ノルウェーの市民は電気自動車に満足しているという調査結果があります。ITmediaの記事によると、2021年10月にノルウェーで行われたアンケートでは、電気自動車に乗り替えた人の約65％が「満足」と回答し、わずか7％が「不満」と答えたということです1。電気代や航続距離、充電設備などの要因についても、ほとんどの人が「問題ない」と評価しています。
電気代については、ノルウェーでは再生可能エネルギーが電力供給の約98％を占めており、電気料金は欧州で最も安い国の一つです2。そのため、電気自動車の充電コストは内燃機関車の燃料コストよりもはるかに安くなっています。例えば、テスラ・モデル3を満充電すると約500km走行できますが、その充電コストは約100クローネ（約1200円）です3。一方、内燃機関車で同じ距離を走ると、燃料コストは約600クローネ（約7200円）になります4。
航続距離については、電気自動車のバッテリー性能や技術が向上しており、寒冷地でも十分な走行が可能になっています。また、ノルウェーでは充電インフラが充実しており、2022年末時点で約1万3000基の公共充電器が設置されています。これは100kmあたり平均約25基という密度であり、欧州でもトップクラスです。さらに、政府は2025年までに全国で5万基の高速充電器を設置する計画を発表しており、航続距離の不安を解消する努力をしています。
以上のように、ノルウェーの市民は電気自動車に満足していると言えます。しかし、それだけに課題も多くあります。例えば、税収減少や公共交通機関の利用減少への対策や、バッテリーのリサイクルや廃棄物処理への対策などです。ノルウェーはこれらの課題にどう対処していくのか、今後も注目されます。
電気料金が高騰！！電気自動車のほうがランニングコストが高くなる事態に
2022年3月に、ノルウェーの電気料金は平均で1キロワット時あたり約1.5ユーロ（約200円）に達し、史上最高値を更新しました1。これは、ガソリンの価格（1リットルあたり約2.2ユーロ、約300円）よりも高い水準です。電気料金の高騰の原因は、主に以下の3つです。
ウクライナ戦争によるエネルギー市場の混乱
気候変動による水力発電の減少
電力自由化による競争の激化
まず、ウクライナ戦争によって、欧州のエネルギー市場は大きな不安定さに見舞われました。特に、ロシアからの天然ガス供給が減少したことで、欧州各国では天然ガス価格が急騰しました。天然ガスは電力生産の重要な燃料であり、その価格上昇は電力価格にも影響しました。ノルウェーは欧州最大の天然ガス輸出国であり、欧州の天然ガス価格と連動して電力価格が決まります。そのため、ウクライナ戦争はノルウェーの電力価格にも大きな影響を与えました。
気候変動
次に、気候変動によって、ノルウェーの水力発電が減少しました。ノルウェーは世界有数の水力発電大国であり、その発電量は国内の電力需要の約90％を賄っています4。しかし、近年は降水量や氷河の融解量が減少し、貯水池の水位が低下しています。その結果、水力発電の生産能力が低下し、電力供給が不足する恐れが出てきました5。
電力自由化
最後に、電力自由化によって、ノルウェーの電力市場は競争が激化しました。1991年から始まった電力自由化は、消費者や事業者に選択肢を与えることで、効率的で安価な電力供給を目指していました。しかし、自由化に伴って、電力価格は需給バランスや市場環境に左右されるようになりました。特に、2020年から2021年にかけて新型コロナウイルス感染症（以下「新型コロナ」という）の影響で電力需要が減少したことで、電力事業者は利益を確保するために価格を引き上げる傾向が強まりました。
以上のように、ウクライナ戦争だけでなく、複合的な要因によってノルウェーの電気料金が高騰しています。政府はこの問題に対処するために、低所得者への補助金や税金減免などの措置を講じていますが、根本的な解決策となるかどうかは不透明です。ノルウェーはエネルギー先進国として、エネルギー安全保障や脱炭素化に向けて、今後も注目されます。
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